
初めてのトゥシューズを手にし、お教室でほんの数分立つ練習を始めた小学3年生の春。時を同じくしてコンクールに参加してきたいか…のお手紙も貰った。
「コンクール?楽しく踊るだけじゃなくて競い合うの?」バレエを趣味のお稽古事位に考えていた私は少々面食らった。
「コンクール、どうするの?」そう帰りの車の中で聞くと、遠慮気味に、でも即答で、「出てみたい。挑戦してみたい。」と力強く申す娘。8歳7か月の意思は固いようだ。何度も聞くが答え変わらない。優しく穏やかな性格であるがバレエの事に関しては頑固である。

お教室のお姉さん達のレッスンぶりを見ていて、思いつく限りの事を説明してみた。
・自分のクラスレッスンとは別にコンクールクラスにも参加するようになる事
・毎日に近いレベルでレッスンが入ってくるので放課後は学校のお友達と遊ぶことが難しくなる事
・大好きなオヤツも体型管理の為に内容や量が変わってくる事
・ハードな毎日と体型管理の為にご飯も内容が変わってくる事
・先生とマンツーマンの個人レッスンも入ってくる事
・優しいレッスンばかりではなくなる事
・1日の時間の使い方をしっかり計画を立てないと宿題する時間さえ危うい事
・沢山こなして眠るのが遅くなってしまったら背が伸びにくくなる事
・今以上にレッスン代がかかる事
・バレエレッスンに充てられる年間お金は〇円であり、その中でやりくりしなければならない事。
・毎日の送迎やお月謝、日程のやりくりにおいて、家族の協力が必要不可欠な事
娘は「それでも私は頑張ってみたい」とだけ言った。

ならば応援しようではないか。その小さな身体から発する大きな決意。しっかり育てて愛でていこうではないか。なんと素晴らしい娘なのだ。
いや、でも、待てよ。
我が地域は田舎なのに私学受験が当たり前のところ。クラスの半分は中学受験をする地域だぞ。公立に行けば学費は浮くけれど、コンクールや発表会なんかに出て欠席が多いと、勉強の点数だけならまだしも、内申書にも響くのは公立だぞ。バレエ漬けの高校受験なんて、大丈夫なのか。中学生なんて踊りも一番伸びる時期だよ?高校受験も両立できるほど、うちの娘は器用だっけ?
4年生からは塾に入ってコツコツと知識を蓄えていくのじゃなかったかい。大好きなあの子と同じ中学校に入りたいとか言ってなかった?バレエ漬けの毎日で、どうやってお勉強するんだい?お祖父ちゃんは「教育こそ財産だ」って言ってたのに、今のこのご時世に、バレエの天才的才能があるとは限らない娘の学歴はどうするんだ…怪我をして踊れなくなった時に中卒じゃ…
「ママ、明日から、お家でスパルタ塾講師になるから。ついてこれるね?」
コンクールの参加是非を問う、ただそれだけの手紙に、我が家の中学受験の覚悟を決めさせられた帰り道であった。ちなみに、受験先は偏差値高くない私学であるが、お勉強を頑張る子も部活を頑張る子も応援してくれて、もしバレエに飽きてもお勉強に転ぶことができそうである。先生方も芸術関係のお稽古事に理解があり、学校の設備環境も良く、120年ほど伝統がある学校はとても魅力的であった。指定校推薦が沢山あるのも。
我が家での中学受験対策はまた後程ご紹介。偏差値が高い学校ではないので、小学6年生の今もバレエをメインに、合間に受験勉強して、ゆるりとやっている。ゆるり過ぎて発狂する事もしばしば。
※我が家は安心パイをとって地域柄もあり中学受験を選んだ。学費がかからない公立進学も魅力的であるのだが。公立進学されたご家庭のお話も伺ってみたいなぁ。